HOME > メディア掲載
<掲載内容>
タナベ歯科医院院長・歯学博士 田邉昭
私は歯科医になった当初から東洋医学に関心を持ち、ツボや漢方の勉強を重ねていました。昭和五八年に開業して以来、低周波や鍼灸によるツボ刺激を積極的に採用。西洋医学と東洋医学の利点を同時に活かすことを、治療の根幹にしています。
ツボ刺激の目的は大きく二つあります。「自律神経の調整」と、「歯周病・虫歯による痛みの緩和」です。まず前者について解説しましょう。
自律神経は交感神経=活動時に働く神経と、副交感神経=休息時に働く神経から成り立っており、二つがバランスよく働くことで、自然治癒力(病気に打ち勝とうとする力)が発揮されます。逆に、どちらかの神経が優位の状態に傾くと、様々な症状を引き起こす原因になるのです。ツボ刺激で自律神経を穏やかに調整し、自然治癒力・免疫力を高めて全身的に健康な状態を維持してもらうことが歯周病の改善・予防につながります。
当院ではツボが密集している歯ぐきのマッサージを取り入れています。歯ぐきのツボを刺激することで血液やリンパの循環が活発になり歯周病の予防・改善に役立ちます。口の中にもコリがあるのです。ツボを刺激され気持ちよくなって寝てしまう患者さんもおられます。セルフケアでは歯を磨くだけでなく歯ぐきも優しくマッサージするつもりでブラッシングすること勧めています。
具体的なツボ刺激のやり方は次ページでお伝えしますが、当院では「自律神経の調整」に合谷というツボをよく活用しています。さらにこのツボは「歯周病・虫歯による痛みの緩和」にも効果があります。
このツボを刺激すると、大脳から痛みを抑制する脳内モルフィンが分泌され痛みを緩和させることができるのです。これが、ツボ刺激のもう一つの特徴です。歯周病や虫歯の痛みを訴え来院される患者さんの多くは、交感神経が優位の状態に傾いています。そのため、麻酔が効きづらく治療できないケースがありますが、こうした患者さんに合谷に低周波や鍼灸を施すと、痛みがやわらぎ、麻酔も効きやすくなります。
また最近になって、歯周病にダイレクトに作用する女膝というツボを知りました。一般的によく知られるツボは経絡上に位置し、正確には経穴といいますが、それに対して、経絡外に点々と単独で存在するツボを奇穴といいます。奇穴の特徴は特定の病気や症状の改善に働くことで、女膝も奇穴の一つです。
さっそく試してみたところ、確かに歯ぐきが引き締まったように感じられ、とても爽快。スタッフにも大変好評なので、当院のツボ刺激に新たに採用しよう、と現在考えています。
患者さんにはツボの位置をマジックペンで書いてあげるなどして、ご自宅でツボ刺激を実践していただく機会も少なくありません。「痛みがやわらいだ」「リラックスできて気持ちがいい」という声をよく聞きます。
上のように、ツボ刺激には自律神経を整える大局的な側面と、痛みを緩和させる直接的な側面があります。
自然治癒力・免疫力が高まれば歯周病は改善しやすく、また、再発しにくくなります。先述したように、口腔疾患でお悩みの方は交感神経優位の状態ですから、ツボ刺激でぜひ副交感神経を上手に働かせてみてください。症状の回復を促進する大きな一助となるはずです。
» 院長 田邉昭プロフィール
昭和51年3月、愛知学院大学歯学部卒業。愛知学院大学歯学部付属病院、多治見市民病院歯科口腔外科をへて、タナベ歯科医院を開業。西洋医学と東洋医学を融合した治療に定評があり、多くの患者さんが来院する。